恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
「きゃあああーああーーー!」
雪山に鳴鈴の高い悲鳴がこだまする。
「うわあああ、お妃さまがあああ!」
護衛の兵士たちが顔を青くする。子供たちも固まって動けなくなった。
「鳴鈴!」
「お妃さまっ!」
飛龍と緑礼が斜面を駆け下りる。鳴鈴のそりは雪に跡を残し、高速で駆け抜ける。その結果。
「ひゃっ!?」
体重のかけ方を間違えたのか、そりが傾いた。どうにもならず、横転したそりから鳴鈴の体が投げ出された。
ころころと雪面を転がる鳴鈴の姿に、その場にいる全員が青ざめた。飛龍と緑礼を追い、兵士たちも斜面を降りる。
鳴鈴は斜面の下にあった木の幹にぶつかり、停まった。枝に積もっていた雪が衝撃で滑り落ち、鳴鈴の体に容赦なく降りかかった。
「鳴鈴、鳴鈴!」
最初に鳴鈴の元に着いたのは飛龍だった。急いで雪に埋もれる鳴鈴の体を抱き起し、雪を払う。
すぐに鳴鈴の閉じられていたまぶたが開いた。大きな目を瞬かせると、彼女ははじけたように笑いだす。
「あはははは……っ、やってしまいました!」
そりは思ったよりも高速で、乗っている間怖くて仕方なかった。けど、停まって自分が無事だとわかると、どうしようもなくおかしくなってきた。木にぶつかったけど、さほど痛くなかった。