恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
「もう一回よ、緑礼。上まで運ぶのを手伝ってちょうだい」
飛龍の腕から飛び出し、緑礼に命令をする鳴鈴を、兵士たちが口を開けて見ていた。
「ならんっ、鳴鈴!」
背後で獣の唸り声がしたと思うと、後頭部に何かがぶつけられた。冷たい感触に驚いて後ろを見ると、飛龍が雪玉を作りながら立っていた。
「どうしてももう一度そりに乗ると言うのなら、俺を倒してからにしてもらおう」
「ええー、どうしてです?」
「危ないからだっ! 怪我をしてほしくないからに、決まっているだろう!」
びゅっと飛龍が投げた雪玉が宙を切り、鳴鈴の肩に命中した。砕けた雪の欠片が頬を打つ。
「冷たっ。やりましたね、殿下っ」
足元の雪を固めて投げる鳴鈴。当然のようによける飛龍。そのまま、新婚夫婦は雪合戦に突入した。
飛龍が手加減をしているのは明らかで、きゃっきゃとはしゃぐ鳴鈴の声が響いていた。いつの間にか子供たちもそこに加わり、緑礼と兵士たちは呆れたように笑い、その場を傍観していた。