恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
朝になり、王府の門の前に馬に乗った兵士たちがずらりと並んだ。その先頭に立つのは星稜王・飛龍だ。
薄い空色の袍の上に銀色の胴当て、三重に羽根を広げたような鋭い護肩。顔周りの黒髪を邪魔にならないように編み込み、一つに縛り上げた姿は、絵巻物から飛び出した闘神のようだった。
(具足の殿下も素敵だけど……)
婚礼衣装のときは無邪気に喜んで見ていられたが、今は違う。
これは絵巻物でも書物でもなく、現実なのだ。美しき夫が今、戦地へ赴こうとしている。
王府の空気はぴりぴりとしており、いくら王の妃と言えども、軍隊の先頭に飛び出し、飛龍に抱きつくことはできない。
鳴鈴は門の端から、緑礼とともにその姿を眺めていた。
「いざ、出陣!」
聞いたこともない大音声が飛龍から飛び出ると、兵士たちがそれに呼応した。
門から出ていく飛龍が一瞬、鳴鈴に視線を送る。
──大丈夫、絶対に帰ってくる。
そう言っているようだった。
鳴鈴は涙をこらえ、その後姿が豆粒になってもまだ見送っていた。