恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜


賊に襲われた夜から数日。

鳴鈴は何度目になるかわからないため息をついた。

「ねえ緑礼、あのお方の正体はまだわからないの?」

近くに座る緑礼に尋ねるのも、もう何度目だろう。

「申し訳ありませんが」

緑礼が呆れた顔で鳴鈴を見る。

鳴鈴は屋敷に帰るとすぐ、助けてくれた男の素性を調べるように護衛や侍従に依頼した。手がかりは男が残していった外衣一枚。

護衛たちは男の姿を見ているので、用事で外に行くたびに似ている男がいないか気をつけているようだが、今のところ成果は出ていない。

あの男は誰なのだろう。あの夜以来、舞うように剣を振り、自分を助け抱きとめてくれた美男のことを思わない日はない。

彼のことを思うと胸が熱くなる。鳴鈴にとって初めての感覚。これが恋なのだと自覚するのに時間はかからなかった。

会えないと思うと、余計に恋しさが増すばかり。

「やっぱりお父様に事情を話すしかないわね」

帰宅が遅れた理由はもちろん話してある。正体不明の男に助けられたことも。

しかし、鳴鈴が彼に恋をしてしまったことは話していない。


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