恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜

鳴鈴の父は皇城に勤める官吏。頻繁に王都に出入りするため、あの男にばったり会うこともあるかもしれない。

外衣の上等さから見るに、きっと彼は身分の高い人なのだろう。夜にお供もつけずに出歩いていたところを見ると、王族ではなさそう。

あんなに強いのだから、武官かもしれない。貴族であれば、身分的には問題ない。いきなり縁談を取りつけることはできなくとも、お見合いとか……。

(何を考えているの私! 気が早いってば)

ひとめ会ってお礼を言いたい。これだ。この理由ならば、厳格で過保護な父も協力してくれるかも。

ひらいめいた鳴鈴はちっとも読み進まない書物を置き、立ち上がった。そのとき。

「失礼します、お嬢様」

ひとりの侍女が部屋の戸を開けた。鳴鈴の身の周りを世話してくれる侍女ではない。父に仕えている人だった気がする。

「ご主人様がお呼びです」

「まあ。私もお父様にお会いしたかったの。ちょうどよかった!」

るんるんと軽い足取りで主人の間に向かう鳴鈴のあとを追いながら、緑礼は密かにため息をついた。

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