一途な御曹司に愛されすぎてます
「矢島様、よろしければご一緒に庭を散策しませんか?」

 不意に話しかけられ、思考の淵から我に返った。


「あ、はい? すみません、なんでしょうか?」


「手前味噌ですが、この庭はなかなか美しいですよ。よろしければ私に庭をご案内させてください」


 一瞬躊躇したけれど、その親切な申し出を断る理由はどこにもない。


「……はい。ぜひお願いします」

 私は椅子から立ち上がり、階上さんにエスコートされながら庭を歩き出した。


「今の時期も美しいですが、緑も花もこれからの季節が一番豊かになります。ほら、温室もあるんですよ」


 向こうに見えるビニールハウスを指さしながら、彼がさり気なく私の腰に手を回している。

 その感触を過敏なほど意識しながら、自分の中の感情と向き合うことで精いっぱいな私には、彼の手を振り払う余裕もない。

 さっき自分があんなに自然に、彼に惹かれていると自覚していたことに愕然とするばかりだ。
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