一途な御曹司に愛されすぎてます
 そう言って彼はテーブルの上に置いてある残りの切り花を手早く包装紙に包み、そこに置いたまま急ぎ足で扉へ向かった。


「花はバトラーに片付けさせますので、そのままにしておいてください。それでは本当にすぐに戻ってきますから、待っていてくださいね」


「はい、待っています。行ってらっしゃい」


 何気なくそう言葉をかけると、廊下に一歩踏み出した彼の片足がピタリと止まった。

 そしてこちらを向いた彼は、綺麗な二重の両目をキュッと細め、小さな声で嬉しそうに答える。


「……行ってきます」


 彫像のような優美な頬のラインが幸せそうに赤く緩んで、なんだか蕩けてしまいそうだ。

 彼から漂ってくる陶然とした空気に当てられたせいか、こっちまで頭の芯がポーッとしてきて、全身が火照ってくる。


 べつに特別意識した言葉じゃなかったけれど、『行ってらっしゃい』『行ってきます』ってやり取りは、なかなか照れ臭いかもしれない。

 そう自覚したらますます体が火照って、幸福感が込み上げてきて頬が勝手に笑ってしまいそうになる。


 ただの友だちとしての関係が進んだだけなのに、こんなことくらいで顔がニヤケるとか、まるで女子高生みたいだ。
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