一途な御曹司に愛されすぎてます
「それじゃ」

 軽く片手を上げて、彼は部屋から出ていった。

 その声と態度に、これまでにない砕けた印象を感じて、彼の背中を見送る私の心が真っ白な雲みたいにふわふわと浮ついた。


 ああ、本当にこのモニター旅行に参加できてよかった。ついさっきまで悩んでいたのが嘘みたい。

 美千留の強運に心から感謝しなきゃ。そうだ、もっとお土産を追加しようかな?

 美千留も甘い物が大好きだから、あの絶品トルテを買ってあげたら喜びそう。


 そう思ってテーブルの上に置いていたバッグを取ろうとした私の目が、その横に置かれている黒いスマホを見つけた。

 これ、きっと階上さんのスマホだ。さっき切り花をまとめていたときに置き忘れたんだろう。

 すぐに戻ってくると言っていたから、このまま預かっていればいいのかな? でも仕事で使っている物だし、ないと困るかも。

 もしも彼が取りに戻ってきたら二度手間になるし、やっぱり届けてあげよう。

 私はスマホを持って急いで部屋を出た。

 電話で大階段へ行くと言っていたから、たぶん一階ロビー奥の、二階と繋がる宮廷階段みたいな所にいるはずた。
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