一途な御曹司に愛されすぎてます
 エレベーターで二階まで降りて、そこから階段のあるスイート宿泊客専用ラウンジの方面に向かう。

 中世の城内のような華麗な装飾が随所に施された廊下を足早に歩き、ちょうど角を曲がったところで、私は立ち止まった。


 通路の先の壁際に置かれた等身大の真っ白な女神像の陰に、ふたつの人影が見える。

 ひとりは階上さん。もうひとりは見たことのない初老の男性で、ふたりは向かい合って熱心に話し込んでいるようだった。

 真面目な表情からして、かなり大事な用件らしい。


 邪魔をしないようにスマホを手渡したらすぐに立ち去ろうと思いながら、廊下の角から一歩先へ踏み出したとたん、階上さんの声が耳に飛び込んできた。


「俺が誰をロイヤルスイートに泊めようが問題ないだろう? 料金はちゃんと俺のポケットマネーで支払っているんだから」


 思わず足の動きが止まった。

 これまで聞いたこともない彼の刺々しい声に驚いたのもあるけれど、話の内容が耳に引っかかった。

 ロイヤルスイートに泊めている? それは私のこと?
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