一途な御曹司に愛されすぎてます
 階上さんのキツイ口調からして、これは明らかに芳しくない話し合いのようだ。

 私はとっさに後ろに下がって、壁の陰に身を潜めながら覗き込んだ。

 盗み聞きなんて失礼だとは思うけれど、このまま立ち去ってはいけない予感がした。


「でも専務、せっかくのプレオープンなんですから、ロイヤルスイートには影響力の大きい評論家を呼んで宿泊してもらうべきでしょう? 私ども役員が何度も専務にそうご忠告したのに」


 しかめっ面をしている白髪交じりの男性は、どうやら階上リゾートグループの役員さんのようだ。

 見るからに高級そうな時計や靴を身に着けているところからして、かなり上の役職の人だろう。

 答える階上さんの声にますます棘が混じる。


「わざわざライターに金を払って、見え見えのベタ褒め記事を書かせるつもりか? 消費者は馬鹿じゃないんだ。あっという間に反感を買うぞ?」


「専務は効果的な宣伝というものが、まだわかっていないんです。そういうことは我々古参がよく心得ているんですから、すべて任せてくれればいいんです」
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