一途な御曹司に愛されすぎてます
 その言葉を聞いたとき、ひとつの記憶が鮮明に甦った。

 帰宅する日の朝、ホテルの扉を開けた瞬間に目に飛び込んできた花々の彩りの美しさ。

 髪もスーツもしっとりと雨に濡らし、両腕いっぱいの花束を抱えた彼の笑顔。


『花が好きだ』と言った私のために、雨も厭わず彼は花を運んでくれた。

 そして今も彼は、私のためにこうして心を尽くしてくれる。

 胸の奥にポツンと小さな熱が灯って、それがじわじわと膨れ上がる。

 熱はどんどん大きくなって喉元まで迫り上がり、たまらず口が開いた。


「どうして、こんなに良くしてくれるんですか?」


 私、約束破ってホテルから帰っちゃったのに。

 彼からの好意に見境もなく浮かれて、その結果自滅して、なにも告げずに勝手に帰ってしまった。

 そのくせ連絡がないことを寂しがったりして。

 なにもかも、私はこんなに勝手な人間だ。なのにどうしてあなたはそんなに優しくしてくれるの?
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