一途な御曹司に愛されすぎてます
 この手際良さから考えて、彼は最初から私をこの部屋へ誘うつもりだったんだろう。

 開いた扉の隙間から中の様子が見えて、私はためらった。

 私だって子どもじゃないんだから、男性と一緒に部屋に入るという行為のリスクは知っている。

 躊躇する気持ちが心の境界線になって、足が動かない。


 彼の領域にまんまと踏み込んで、どうする? なにかあったら私はちゃんと拒否することができる?

 もしも拒否できなかったら、どうなる?


 シンデレラになれない私が先へ進んだら、きっと傷つく結果が待ち構えていることだろう。

 怖い。もう二度と傷つきたくなんかない。

 でも、このまま彼と離れてしまうのを惜しむ気持ちも本心なんだ……。


「言っておくが、回れ右して帰ろうとしても無駄だぞ? リムジンはもう帰したし、他の車も俺の許可がなければ一台も出さないように伝達してある。どうしたってキミはここから逃げることはできないんだ」


 彼がヒョイに身を屈め、私の顔を覗き込んだ。

 そのおどけた表情と明るい口調の奥に、彼の私への配慮を感じる。
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