一途な御曹司に愛されすぎてます
 チェックインを済ませた人から順に、担当のベルスタッフがモニター客をそれぞれの部屋へと案内していく。

 大理石の床の色にマッチした濃茶の天然木製カウンターの傍らに専務さんが立って、お客の一人ひとりに挨拶をしていた。

 並んで順番を待ちながら、一歩前へ進むごとに心臓のドキドキが増す。


 どうしよう。あのときのお礼を言いたいけれど、専務さんの姿があまりにも想像とかけ離れすぎて気が引けてしまう。

 それによく考えてみれば、専務さんが覚えているかどうか。

 私にとっては特別な出来事だったけれど、専務さんには些末なことだったのかもしれない。

 覚えていないことをお客から言われて、余計な気を遣わせることになるかも。
 それではご迷惑になってしまうし……。


 チラチラと専務さんの顔を盗み見して悶々と迷っているうちに、あっという間に私の番になった。

 と、斜め横に立つ専務さんとばっちり目が合ってしまって慌てて視線を逸らす。

 うわあ、こっそり見てたのがバレちゃった。恥ずかしい!
< 55 / 238 >

この作品をシェア

pagetop