一途な御曹司に愛されすぎてます
 ロビーと同じ大理石の床と、アンティーク風の調度品が飾られている廊下を進んで、突き当りの手前の扉の横で専務さんがカード錠をリーダーにかざした。

 そして真っ白な扉が左右に開かれた瞬間……私は目の前に広がる光景を見て、目を剥いて仰け反ってしまった。


『なにこれ――!』


 声にならない悲鳴が喉の奥からほとばしる。

 顔が映るんじゃないかってくらいツヤツヤに磨き上げられた寄木張りのフロアー。

 目を凝らすほど細やかな飾り漆喰の壁。

 アーチ型天井には雪の結晶を思わせる大きなクリスタルシャンデリア。

 シルクのカーテンの縁を彩る金糸の繊細なレース。バロック調の曲線が美しい、ブルーベルベット生地のソファーやアームチェアー。

 どれもこれも、ここに存在する物すべてが素晴らしすぎて顎が外れそう!


「矢島様」

「……はひ?」


 我ながら間抜けな声だとは思うけれど、あまりの豪華絢爛さに、息をするので精いっぱいだ。

 小刻みに震えている私の横で、専務さんは実に淡々と業務を遂行する。

「こちらが当ホテルのロイヤルスイートでございます。それでは中をご案内させていただきます」
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