一途な御曹司に愛されすぎてます
 茫然自失の状態でフラフラと彼について行くと、リビングの向こうにベッドルームがあった。

 このベッドルームがまた、リビングに負けず劣らずの広さで。

 シルク生地の天蓋付きのベッドは緻密な金刺繍が施されていて、鏡台や衣装ダンスは、すべて純白を基調にしたバロックのディテールで統一。

 バスルームも上品な大理石。アメニティも完璧に充実していて、自前の物がまったく必要ないくらい。


「この階にはパーソナルバトラーが常勤しておりますので、御用の際はなんなりとお申し付けください」


 バトラー? それ、執事だよね?

 庶民にとっては映画やドラマで見たことあるだけの、まったく別世界の存在だ。


「……はあ。じゃあ、今日の夕刊にアイロンかけて持ってきてもらえます?」


「承知しました。さっそく伝えておきます」


 前に観た映画のシーンを基に冗談を言って気を楽にしようとしたら、ものすごく真面目な顔で返されて、二の句が継げなかった。

 どうしよう。冗談が冗談として通用しない世界だ。ここ。
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