ツンの恩返しに、僕は108本のバラを贈るよ
瑞樹は『仕事』に対する理解ができている子だ。
「たぁ君、バイバイ」といつも私にするように手を振る。

「あっさりしすぎだ……たぁ君は淋しいぞ」

本気で落ち込んでいるようだ。大人げない。それに追い打ちを掛けるように訊ねる。

「副社……拓也さん、明日は何時にお出掛けですか?」

ムッとしながら「八時半に迎えが来る」とふてくされた声で答える。

「了解しました。それまでに朝食の準備を整え……」

『ます』と言い終わらないうちに、「そうだ!」と副社長は目を輝かせて瑞樹に提案する。

「一緒に出勤しよう!」

ナイスアイディアとばかりにウキウキし出す副社長に、いや、そこはまず私に了承を得るべきでしょうと思っていると、「奈々美、保育園は何時からだ?」と問う。

「――いつも八時までに送っていますが……」
「じゃあ、決まりだな」

フフンと鼻歌でも歌い出しそうなほど浮かれているが、いいのだろうか?
お迎えが来るということは、おそらく運転手さんか誰かが来るということじゃないのか?

「えっと、瑞樹が一緒でビックリされませんか?」
「瑞樹だけじゃない。君もだ」

――ん、どういうこと?
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