俺様外科医の極甘プロポーズ

内科病棟に異動してひと月がたった。ようやく仕事にも慣れ、看護師としての徐々に自信を取り戻しつつあった。

「明日六時台の新幹線だからね。はいこれ。花村さんのチケット」

 ナースステーションで晴也先生は私の新幹線のチケットを差し出した。

「だいぶ席が離れているからそれぞれ乗って、新神戸の駅で落ち合おう」

「はいわかりました。ありがとうございます」

「じゃあ、僕は回診してくるからね」

 私はそれをポケットにしまい立ち上がると奥にいた吉野師長と目が合った。

「仕事中に先生と楽しくおしゃべり?」

 師長は私に近づいてくると語気を強めてそう言った。

「すみません。仕事の話をしていただけです。そろそろ点滴交換の時間なので行ってきます」

 仕事に戻ろうとしているのに、吉野師長は話を辞めない。

「仕事に慣れてきたとおもったら、これだから。あなたそうやって壱也先生のことをたぶらかしたの?」

「そんな、違います!」

「じゃあ、今のはなに?」

 どうしたんだろう。いつも穏やかな吉野師長がこんなに感情的になるなんて。

「本当に仕事の話をしていただけです。私、明日神戸の学会に同行させてもらうんです。その打ち合わせで……」

「学会?」

「はい。なので明日明後日とお休みをいただきました」

「どうしてあなたなの?」

「それは、私が勉強したいといったので晴也先生が誘ってくださったんだと思います。仕事に活かせるようにたくさん学んでこようと思っています」

 私は決してお遊び感覚で神戸行きを決めたのではない。それを師長にはわかってほしかった。

「……そう。そういうこと。わかったわ、仕事に戻っていいわよ」

 吉野師長はそういうと、くるりと背を向けた。

「はい。師長、すみませんでした」

 私は師長の背中に頭を下げる。そして新しい点滴をもって患者さんのもとへと走った。

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