俺様外科医の極甘プロポーズ
「お疲れ様です」
「お疲れ様」
「……あの、晴也先生!」
私は意を決して晴也先生を呼び止めた。
「なに? えと……」
どちら様?といった顔をされ、私はあわてて名前と所属部署を言う。
「花村です。外科病棟の」
「ああ、花村さんね。何か用?」
「壱也先生に医局にある荷物をとってくるように言われてしまったんですよね」
晴也先生に取ってきてもらえたら。そんな気持ちを込めて言った。すると晴也先生は表情を曇らせる。
「頼まれたのは君だよね」
「そうですけど……」
「悪いけど、壱也には関わりたくないんだ。あいつのせいで、みんな迷惑している。君も同じだろ?」
迷惑していないと言ったらうそになる。壱也先生が着任したからというもの、気の休まる時がない。
「僕を前にして“うん”とは言いにくいよね」
「まあ、そうですね」
お兄さんに弟の文句を言うなんてできないもの。
「……なんていうか。そんなに嫌ならその荷物、別に君が取りに行かなくてもいいんじゃないかな。業務外だし。じゃあ、僕はそろそろ回診の時間だから」
まるで逃げるように、晴也先生はいってしまった。確かに私がやらなければいけない理由はない。拒否する権利もある。
そもそも今日は公休日だ。けれど、このまま壱也先生を放っておいていいはずがない。
いろいろ考えて、私は医局のドアを開けた。幸い中にはだれもおらず、先生の注文通りに荷物をかき集める。ロッカーの中の私服。デスクの上のパソコン。言われた場所に奇麗にそろえておいてあった。
ほかの先生たちの荷物を見ると山積みで、いまにも崩れそうだというのに。ロッカーもデスクも、壱也先生の性格そのものだと思った。