俺様外科医の極甘プロポーズ
「おい。誰が帰っていいといった。まだ仕事は終わってないだろう」
くいっと顎で示される。私は視線を向けた。これを運べということか。廊下に置いた病院の医局から私が持ってきたパソコンと資料。
「ああ、はいはい。……まったく、看護師使いが荒いんだから」
「なにかいった?」
「いえなんでもありませーん!」
私は靴を脱ぐと「おじゃまします」といって中へと進む。
廊下の両側にはいくつかのドア。そして突き当りにリビング。うちっぱなしの壁と、配管をむき出しにしたままの天井。イアンダストリアルインテリア。男らしいセンスの部屋は、洒落たカフェや美容室のような雰囲気を感じる。
意外とセンスいいんだ。
思わず感心してしまった。今着ている私服もデニムにシャツというシンプルカジュアルなスタイルなのだが、スタイルの良さも相成ってとてもおしゃれに見える。
実際、上下で十万円はくだらないハイブランドなのは確かだけれど、ただお金をかければいいというものでもない。着こなせなければせっかくの洋服も台無しにしてしまう。
これは偏見なのかもしれないが、勉強ばかりしてきたお医者さんという人種は、おしゃれに疎い。
今まで私は何人もの残念なファッションセンスの医者というものを見てきた。そんな中で先生ほどのおしゃれな医者には初めて出会ったといっても過言ではない。
「先生って意外とお洒落さんだったんですね」
「意外と? ……そんなにセンスのない男だと思っていたのか?」
「あ、いえ」
しまったと思い口をつぐむが時すでに遅し。
「失礼な女。まあいい。そういうお前も意外とまじめに仕事をする人間だったようだし」
まさかの巨大ブーメランに私は面食らった。