俺様外科医の極甘プロポーズ

そうこうしている間に、パスタが茹で上がる。あとは、サーモンとほうれん草のソースに絡めれば完成だ。

「先生、夕ご飯の準備ができました」

 リビングのテーブルに料理を並べると、先生はパソコンを閉じで床に座りなおす。

「どうぞ召し上がってください」

 すると先生は不思議そうな表情を浮かべた。

「君の分は?」

「ありません」

 はじめから自分の分もなんて考えていなかった。

「帰ってからゆっくり食べるので、大丈夫です」

 だってその方が気兼ねなく好きなものを食べられるじゃないか。先生は私の顔をじっと見ると、小さく首をかしげる。なにかおかしなことを言っただろうか。

「どうして帰れると思うわけ?」

 今度は私が首をかしげる番だ。

「……どういう意味ですか?」

「また明日来ればいいとか思っていたのなら考えが甘いよ。そもそも患者をひとりでほったらかしにする看護師がどこにいるんだよ」

 確かにそうだ。二十四時間看護が鉄則。でもそれはつまり……。

「私が先生のマンションに泊るということですか?」

「もちろんそうだろう」

 先生はなにを言っているんだといわんばかりの顔をする。

「じゃあ、いただきます」

 パスタをひとくちほおばってうまいと一言ほめてくれる。それからパスタをフォークにくるくると巻き付けると、私の口元に差し出す。

「ほら、食べろ」

 いきなり“あーん”なんてされて、素直に口を開けられるわけがない。

しかも間接キスになるのに。

私は恋愛経験がないのだ。男性にこんなことをされたことは今まで生きてきて、一度だってない。

どうしたらいいのかわからないでいると、「いらないのか?」といって、先生はそれをひょいと自分の口に放り込んでしまう。

目の目から消えたサーモンとにんにくの香りが憎いほどに私の鼻腔をくすぐって、おなかがぐうと鳴った。

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