俺様外科医の極甘プロポーズ
柏瀬病院の経営は破綻していた。調査書によれば、副院長が病院の資金を私的に流用していたとも書いてある。顧問弁護士に相談し、どうにか病院を立て直そうとしたようだが、うまくいかず自転車操業も限界となった。そして
去年くらいからはほかの医療法人に経営権を譲渡する話も出ていたようだ。
長い歴史のある柏瀬病院が消滅する危機的状況。存続させるためにと呼び寄せられた壱也先生と新しい事務長。彼らはその任務を全うすべく、事情を一切伏せたまま、院内の経営改革を始めた。
そこからのことは私も知っている。仕事のできない医者を切り、楽ばかりするスタッフを入れ替えた。先生の改革は多くの反感を買い、混乱を呼びよせ、やがて自らも疲弊してしまった。先生の背負っていたものは私が想像する以上に重い。
「……花村?」
先生の目がゆっくりと開いて私をとらえた。
「先生!」
私はあわてて手に持っていた書類を隠そうとしたが当然間に合うはずもない。