俺様外科医の極甘プロポーズ

「お前。それを、みたのか」

「ごめんなさい。床に落ちていたので、拾おうと思ってつい」

 私は何度も頭を下げる。すると先生は仕方ないとでもいうようにため息を吐く。

「まあいい。本来なら公表するべき事実なんだからな。でも、他言無用だ。これは俺たち家族の問題として解決しなければならないことなんだ。わかるか?」

「……はい」

 家族の問題。そう言われてしまえば何も言えなくなる。

真実を公表したら、晴也先生の立場がなくなる。けれど、このままでいたら壱也先生は悪者のままだ。突然やってきて職員の首を切りまくっている死神のまま。そんなのは嫌だ。でも……。

「先生がそれでいいのなら、私は何も言いません」

「うん。そうしてくれると助かるよ。まあ、俺のやり方は間違っているのかもしれないが、いつかは理解される時がくるはずだ。幸い、大赤字からは脱却できていて、数年のうちには黒字転化できそうだし」

私は今まで先生のなにを見てきたのだろう。本当は優しくて、誰よりも柏瀬病院を愛している家族思いの人だ。

「じゃあ、ご飯作りますね。今夜は二人分」

「ああ、よろしく」

 私はキッチンに立つ。先生はまたパソコンに向かう。カウンターキッチンの反対側から先生の姿を見ながら、私はお米を研ぎ始める。

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