そして、失恋をする
「でも、もうすぐ私は死んでしまうから。だから、ごめんね」

彼女がもう一度、僕に謝った。彼女が謝った理由が、さっきよりもわかった気がした。

「そんなことで、謝らないでよ」

「どうして?」

「だって千夏は、なにも悪いことしてないじゃないか」

「それはそうだけど………」

「それに、僕はうれしいんだ」

「うれしい………?」

僕の発した言葉を聞いて、千夏は目をパチパチとさせた。

「どうして?」

僕に視線を向けて、千夏は不思議そうな顔で訊いた。その彼女の瞳は、かすかに潤んでいた。

「なんか千夏と一緒にいると、僕の好きだった彼女と一緒にいるように思えるんだ。だから、うれしいんだ」

その気持ちは、ほんとうだった。

千夏と一緒にいると、まるでもう一度僕の好きだった千春と会ってるように思える。だから、こうして千夏と一緒に過ごす時間は僕にとってとても特別な時間だった。
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