そして、失恋をする
「ん、どうしたの?」

僕の視線に気づいて、千夏は細くて白い首をわずかにかたむけた。

「べつに、なんでも」

僕はぶるぶると首を振って、低い声で答えた。

「ただ、見てただけ」

「なにそれ?意味わかんない」

少し困ったような表情を浮かべながら、千夏はクスクスと笑った。

ーーーーーーもし千春が生きていたら、こんな感じなんだろうなぁと、ふと思った。

「ねぇ、陸」

ーーーーーードクン!

とつぜん、千夏に呼び捨てで呼ばれた。思わず、僕の心臓の鼓動が大きく跳ねた。

「な、なに?」

緊張しているのか、僕の声が自然と小さくなる。

「私、死ぬ前に陸と二人でやりたいことがある。せっかく病院から抜け出せんだから」

千夏は、さっきよりもはっきりとした口調だった。

「な、なにやりたいの?」

「花火」

「え、花火?」

千夏のやりたいことを聞いて、僕は少し驚いた顔になる。

僕の脳が花火のイメージを自然と作り上げ、夏の切なさをほうぶつさせる。

「じゃ、行こう夏の思い出作りに」

そう言って千夏は、僕の手をぎゅっと握って走った。

「え、おい‥‥?」

僕はどうしたらいいのかわからず、そのままパタパタと走った。僕の頬が赤くなっていたのは自分でもわかった。
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