そして、失恋をする
「でも、どうしてやりたいことが花火だったの?」

僕は袋から線香花火を手に取りながら、なにげない口調で千夏に質問した。

「夏だから」

千夏は、短くそう答えた。

「私の名前、〝千夏〟でしょ。名前に夏が入ってるから、夏らしいことをやってみたいと思ったの」

今の季節と、自分の名前をかけて千夏はあっさりとした口調でそう答えた。

「今まで、夏らしいことなんてやってなかったからさぁ」

千夏は線香花火の火球から視線を僕に移し、白い歯を見せて笑った。オレンジ色の炎に浮かぶ、千夏の頬がどこか悲しく見えた。

少しした後、千夏が持っていた線香花火が地面に落ちて消えた。

「あ、消えた」

それを見た千夏は、短く小さな声でつぶやいた。

「まだあるよ」

すぐさま僕は、千夏に線香花火を渡した。

「ありがとう」

軽く笑みを浮かべて、千夏は僕から受け取った線香花火を火につけた。パチパチと音を立てたのと同時に、先端に火が灯った。

「花火の寿命って、すごく短いよね」

数秒後、消えた線香花火を見て、千夏は悲しそうにつぶやいた。

たくさんあったはずの花火も、気づいたら残りわずかと少なくなっていた。
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