そして、失恋をする
「消えるのって、怖くないのかな?」

火が消えた線香花火を見た後、千夏は僕に視線を向けて訊ねた。その千夏の瞳は、かすかにうるんでいた。

「僕は、花火に命はないと考えてるよ。そういう人間のようなむずかしい感情はないと思うよ」

自分でも冷静で、少し冷たい言い方で否定したかもしれない。けれど、千夏の考え方もわかる自分もいた。

「命はないか‥‥考え方が真逆だね」

クスッと笑って、千夏は僕に視線を向けて言った。その言い方は怒ってるというより、どこか悲しそうだった。

「しゃあ、自分がこの世界から消えるとしたら、陸なら怖い?」

そう千夏は僕に訊ねながら、夏の夜空を見上げた。

どこまでも広がっている夜空には、少し雲に隠れた月が浮かんでいる。月全体が見えることはなかったが、さっきよりも黄色いが濃くなっているような気がした。
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