ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋
不思議な気分だ。初めて会った人と、ふたりで帰るなんて。
古い町並みをふたりで進みながらも、そわそわとして落ち着かなかった。
夜野さんは他愛もない話をしながら、ペースを合わせてゆっくりと隣を歩いてくれる。
普通の人ならこういうところから恋愛に発展していくのかもしれない。
人を避け、誰かと付き合ったこともなければ、恋をしたこともない私には、考えられないことだけれど。
隣を歩く彼の話に頷きながら、そう思った。
「白雪さんは、行方不明事件の犯人は誰だと思いますか?」
突然、彼はそう聞いてきた。
「犯人、ですか?」
一度素直に考えてみたけれど、警察すら何も掴めていないのに、私なんかが目星をつけられるわけがない。
頭を使ったところで真実は分からないし、かといって「分かりません」ではつまらない思いをさせてしまうから、私は引っ越したばかりの夜野さんにこの町のことをひとつ話すことにした。
「犯人は分からないですけど、強いて言うなら“ヴァンパイア”の仕業かもしれませんね」
「ヴァンパイア?……何故です?」
「月夜ヶ丘町って、ヴァンパイアが住んでるって噂があるんですよ」
この町のとある一画に、住宅の明かりすら灯らない誰も寄り付かない場所がある。
今ちょうど良くその場所に差し掛かったため、私は一度足を止めた。
「ここです。『ヴァンパイアの館』」