ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋
「挨拶できなかったから、会えて良かったです。歩きですか?」
「ええ、まあ……」
「僕もです。良かったら、アパートまで一緒に戻りましょうか」
私はまた愛想笑いをして「寄るところがあるので」と首を横に振った。
彼を避けて急ぎ足でスーパーの外へ出ると、アパートへ続く道は真っ暗な闇に包まれていた。
今日にかぎって、街灯がいくつか壊れており、暗闇の静けさに背筋がゾッとした。
「あの、やっぱり心配なので送りますよ。ここら辺、行方不明事件が多発してるとかで、危ないって聞きましたよ」
そばにはまだ夜野さんがいた。
私は迷い始めた。たしかに、行方不明事件が起きている中、こんな夜中にひとりで帰るのは少し怖い。
アパートまでの道のりを一緒に歩くだけだし、大丈夫かな……?
「あの……すみません、よろしくお願いします」
「ええ。それじゃあ、帰りましょうか」
歩き出した真っ暗な道には、冷たい風が吹いていた。人の気配もない。
やっぱり、この道を一人では帰れなかっただろう。どこかでギブアップしていたはずだ。