ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋

アルバさんがノア君にアイコンタクトをすると、ノア君は頷いて、ポン、と音を立ててコウモリの姿に戻った。

彼はノア君がコウモリだということも知っているのか、と私は冷静に考えていた。

ノア君が羽の先についた小さな爪を出し、それを扉の鍵穴に差し込んでくるくると動かすと、やがてガッチャンと音を立てて、重層な鍵が開く音がした。

『あっ……』

「おっと、待ちな」

鍵を開けられたことに気付いたオリーヴィアさんはもう一度閉めようとしたけれど、アルバさんがその前にノブを回し、わずかに開いたドアの隙間にブーツの爪先を差し込んでそれを防いだ。

隙間からは、写真どおりの綺麗な女の人の姿がわずかに見えている。

「逃がさねえよ。話を聞かせてもらうぜ」

「……お入りください」

彼女はすぐに観念して、扉を開けた。

青い顔で俯きながら、それでも私たちを洋館の奧へと案内し始める。

弱々しくて、華奢な人。

ブロンドの髪も綺麗で美人だけれど、どこか疲れきって、やつれている。

同情しちゃいけない。

もしこの人が犯人だったとしたら、人間界の女性を無理やり誘拐してこんな危ない世界へ連れ込んで、とても許せない。

でも、私が見た犯人とはとても違っている。

たとえ姿形が違ったとしても、あの怪しい笑みを浮かべていた“夜野”という人の異様な雰囲気を、私の体は覚えているはずだけど。

この人は、違う……。

< 135 / 209 >

この作品をシェア

pagetop