ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋

彼女はリストに書いてあったとおりの答えを言っただけで、公演が休止になったことには言及しない。

……やっぱり、嘘をついてる。

「それで、オーケストラはどうでした?四回の公演、聴きに行ったんですよね」

私の問いかけに、オリーヴィアさんは視線を逸らした。

「ええ、ええ……もちろん。素晴らしかったです。とても素敵な演奏で……」

「本当か」

「本当です……」

するとアルバさんが話を断ちきるようにテーブルを叩いた。

バン!と大きな音が立ち、オリーヴィアさんの肩はビクリと震え、五本のロウソクの光りが波打った。

「嘘だな」

低い声で指摘され、彼女は絶望の表情を浮かべる。

私はフォローする気はなかったが、彼女を怯えさせると情報を引き出しにくくなること、またアルバさんの怖い顔を見慣れていない私の方も怖くなったことから、少し柔らかくオリーヴィアさんに尋ねた。

「その楽団の公演は直前で中止になったんですよ。オリーヴィアさん、本当は何をしていたんですか?」

彼女は絶望の表情を見せたあとしばらく沈黙したが、私たちは待った。

彼女の口が震えながら真実を話そうとしているのが分かったからだ。

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