ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋
行列の最後尾につき、順番が近づくたびに心臓が痛みを増しながら脈を打ち、私は縮こまって目を閉じていた。
こんなところでもしバレたら……。
「止まってください」
来た。
目を閉けると、ベルベットの制服を着た大きな男の人が、私たち二人を止めた。
アルバさんはコートのポケットに手を入れたまま「へいへい」と従い、私も呼吸を浅くしながらもひきつった笑顔を作った。
「手荷物は?」
「何もねえよ。身軽で来たほうが競り落としたモンを持って帰りやすいからな」
「お連れ様も?」
「ええ、私も、何も持ってきていません……」
男は目を細め、私たちを上から下まで舐めるように見た。
「コートの中は?」
「何もねえって」
コートの中を調べられたらまずいのに……。
「ちょっと中へ」
「おい!離せ!」
アルバさんはベルベットの男に腕を掴まれ、カウンターの中へと引っ張られていく。
「あっ……待ってください!」
私は追いかけようとしたが、ノア君に「アカリ様まで調べられたら大変です。待っていましょう」と囁かれ、確かにそうだと思い直して足を止めた。
アルバさん……。
リストが見つかったら、調べ回っていたことがバレてしまう。そしたらどうなっちゃうの……?