ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋
ハァ、ハァ、と喉をこするような浅い息が、暖炉の内部の壁に反響している。
口の中には血の味が滲んでいて、膝の傷口からも血が止まらない。
「白雪さん?ここにいるんでしょう?血の匂いで分かるよ」
息を潰すように、両手で自分の口をきつく押さえた。
暖炉の中へ隠れたことを後悔した。
見つかったら、もうどこにも逃げられない。
息をしちゃだめだ。この静かな館の中では、少しでも物音を立てたら見つかってしまう。
「まさか君が、探し求めていた“極上の血”の持ち主だったなんて……。絶対に君を“あちら側”へ連れていくよ。さあ、出ておいで」
言っている意味はひとつも分からないけど、考えて理解する余裕はとてもない。
どうしよう、どうしよう……。
暖炉の中から、ついに彼の足が見えた。
足だけじゃない、射し込んでいる月の光のせいで彼の全身のシルエットが見えているのだが、二本の足のほかに、コウモリの羽のような影が映っている。
人間の影じゃない。
まるで、“ヴァンパイア”みたいな……。
夢ならはやく覚めて。お願い………!