ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋

検査をくぐり抜けると、その向こうはまだ閉めきられている会場への大きな扉があり、手前の広間には検査を終えて入場を許された貴族たちがあちこち固まって語らっていた。

その輪の中のひとり、黒いタキシードに輝くような長い金髪の男性はやけに目立っている。

若く綺麗な男性だけれど、仮面の下に見えている口元は、怪しく笑っていた。

アルバさんはその人をこっそりと親指で差しながら、私に耳打ちした。

「仮面を着けてても分かるぜ。ありゃ資産家の“ハインリヒ伯爵”だ。おそらく、出品される人間を全員競り落とす気だぞ」

「え!?どうしてですか?」

「人間の血の狂愛者で、資産の殆どを人間界旅行に費やしてる。こっちでも若い女を侍らせてコレクションにする鬼畜野郎だ。……あいつに買われたら、大豪邸の地下室で鎖に繋がれて監禁されちまうって話だぜ」

ゾワリと寒気がして、ハインリヒという人が見えないように背を向けた。

「あの、アルバさん。ところで、シュヴァルツさんを探しに来たのに、オークション会場へ行くのは何故なんですか?ダークナイトは運営の人なら、裏方にいるんじゃ……」

「それなら大丈夫だ、心配すんな。もうじき扉が開けられる。はぐれんなよ」

意味ありげに笑うアルバさんは、少し強引に私の背を手で押した。

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