ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋

この人が声を上げたとたん、他の人の声は止んだ。

本当だ。このハインリヒという人、人間を競り落としにここへ来たのだ。

司会者が会場内を見渡し、「他には?」と促す。もう誰もいないと判断し、ハンマーを振り上げた、そのとき。

「三万五千」

遠くでさらに誰かがコールし、司会者は振り下ろそうとしていた腕を止めた。

手をあげたのは、ウェーブの黒髪の男。

あの人、さっきすれ違った人だ……。

あのときはシュヴァルツさんに似てるかも、と思ったけど、ここで人間の競りに参加しているなんて、絶対に別人に違いない。

「三万六千!」

ハインリヒは負けじと値を張ったが、その黒髪の男性はさらに「四万」をコールし、ハインリヒはその瞬間に敗北を認め、大きく舌打ちをして手を下げた。

「決まりました!ひとり目を落札したのは、四十四番の方!なんと金貨四万です!」

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