ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋

ネロは狼狽えながら身を引き、シュヴァルツさんの手から逃れた。

全ての怒りを解放するかのごとく、ネロは全身から目に見える熱気を放ち、白髪や結われた髭がその熱気でゆらゆらと持ち上がっていた。

奴の背から気味の悪い翼がふたつ現れて、鬼のような顔からは牙がメキメキと音を立てて伸びていく。

シュヴァルツさんもそれに対峙するように、爪と牙を鋭く変形させていった。

「シュヴァルツさん……!」

「アカリ、離れるな」

変化するふたりの姿を比べたとき、ネロのおぞましさはシュヴァルツさんの何倍ものもので、それがこれから私達に向けられるのかと思うと息が止まりそうだった。

「その娘ごと八つ裂きにしてやる!」

怒りで増長した爪が、私達めがけて襲いかかる。

しかしその爪が私達に触れる前に、突然の鈍い音とともに彼は白目を剥き、フッと電源が切れたロボットのごとく動かなくなった。

続いてそれが傾いて、ドサッと重たい音とともにネロの体が床に沈み込むと、その向こうに見覚えのある人の姿があった。

「ったく、危ねぇ爺さんだな」

「……アルバ、無事だったか」

「アルバさん!! 」

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