ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋
唾液の滴るそれをスカートで拭ってからシュヴァルツさんに手渡し、ノア君には「それで、どうしてですか?」とひきつりながら尋ねる。
「それはですね、ダークナイトに飛びかかったときにこっそりと懐から抜き取っておいたのです。喋れば鍵が見つかってしまいますから、ずっと寝たふりをしておりました。やはり、シュヴァルツ様にはバレていたようですが」
私を助けるためにダークナイトに飛びかかったとき、ノア君はあっけなく叩き落とされてしまったはずなのに、あの一瞬で鍵を奪ったというのだ。
「ノア君、すごい……!」
「へへん、僕はただでは倒れませんからね!」
シュヴァルツさんが彼をそばに置いてる理由がまたひとつ分かった。
小さくてもノア君は彼の助けになっている。
どこかでノア君を自分と同じだと思っていたけど、私とは違っている。彼はシュヴァルツさんのお荷物ではない。
私は自分がショックを受けていると自覚すると、情けなく思った。
「アカリ様?」
「何でもないです。……シュヴァルツさん。鍵も手に入って、女の子も助け出して……あとは何が必要ですか?」
彼を見上げると、じっと私を見つめた後、ほんの少しだけ微笑んで、
「もう揃った。帰るぞ、アカリ。人間界へ」
と答え、頭を撫でた。
私は数秒、固まった。
帰る?……そうか、帰るのか。