ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋

私は廊下の先を見た。ここからはもう、帰るだけ、何もない。

必要なものは全て揃ったのだから、後はこの館の中にあるという人間界への扉をくぐるだけなのだ。

……なんだろう、この気持ち。帰れるはずなのに、私。

「……シュヴァルツさん。貴方はどうなるんですか」

「何も。俺のことは気にかけるな」

「何もないわけないです!だってシュヴァルツさん、私のために大金を使って、嘘の罪を背負わされて……。とても無事だと思えないんです。どうなるのか教えて下さい!ねえ、アルバさん!」

だらりと立っていただけのアルバさんに矛先を向けると、彼はギョッとして視線を反らし、何も答えてはくれない。

「ノア君!」

続いてそばをパタパタと飛んでいたノア君はなも目を向けるが、彼も逃げるようにシュヴァルツさんの後ろへと隠れた。

「アカリ。最初に言ったはずだろう。ここでは目的以外に興味を持つな」

「だって……私のせいでシュヴァルツさんが……!」

「俺は俺の目的を果たしただけだ。お前を人間界へと返すこと、最初から他のことなど考えてはいない。これからどうなるのかも、興味はない」

きっぱりとそう言われたことがショックだった。

シュヴァルツさんがこれからどうなるのかということも、協力してくれたアルバさんやノア君に何もできなかったことも、心残りはたくさんある。

でも私は、シュヴァルツさんと離れたくない。今こんなに胸が苦しいのは、そのせいだった。

私にはそれだけだった。けど、シュヴァルツさんは違う。最初から私を手放すことが目的だ。

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