ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋
自分でもよく分からない気持ちになって、抱えられていた彼の腕から逃れようと暴れていた。
「おいお嬢ちゃん!何やってんだ!」
「アカリ様!落ち着いて下さい!」
アルバさんたちに窘められても、私は止まらなかった。
後ろからは騎士団の足音が迫っている。やがては迷路のような館の廊下にこの赤い騎士団たちが張り巡らされ、囲まれてしまうのだろう。
その前に扉にたどり着かなければならない。
そんな切羽詰まった状況の中、今になって、私は帰りたくないという気持ちが爆発していた。
シュヴァルツさんの着込んでいる胸板をいくら押そうとびくともせず、ポカポカと叩いてみても、彼は片手で、私の手首をふたつとも捕らえた。
「アカリ」
「私、帰りたくありません!だって人間界に帰ったって、何も良いことなんかない!誰も私のことなんか待ってない!今まで、ずっと……!」
「……アカリ」
「ずっと、誰かに必要とされたことなんてなかった」
そう言った瞬間、涙がポロポロとこぼれ落ちていた。