ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋
景色は変わり、長く続いていた廊下から、開け放たれた大きな扉をくぐると、私達はどこかの室内へと到着していた。
そこは絨毯が敷き詰められた何もない部屋で、そのさらに奥には小さな白い扉がぽつんとあるだけ。
アルバさんは入り口の大きな扉を閉めると、そのふたつの取っ手に鉄の板を挟み込んで閉め切った。
しかし数秒後には、背後に迫っていたベルベットの騎士団が扉の外に到着し騒がしくなると、やがて外から扉を壊そうとする音が、ドォン、ドォンと規則的に響き始める。
「シュヴァルツ様!関所に着きました!急いで忘却の術をかけ、皆様を人間界へお返ししましょう!」
ノア君は、先の小さな白の扉を指差した。どうやらあれが、人間界への扉らしい。
始めてこの館に来たとき目にした、ヴァンパイアの世界への扉に似ていた。あれは鉄の、恐ろしい模様の描かれた扉だった。その向こうは真っ暗で、あのときの私は別の世界へ行くことが怖かったのだ。
今は、そのときよりも、この小さな扉が怖いのだ。
この向こう側には、人間界がある。またあの日常に戻るなんて嫌だ。
本当は誰かと繋がりたい。必要とされたい。誰かを好きになってみたい。
シュヴァルツさんを好きになって、そんな自分を初めて知った。
このヴァンパイアの世界で、初めて感じた気持ちがたくさんある。
ずっとここにいたい。