ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋
「シュヴァルツさん……」
私は首を振り、目の前の彼に、精一杯拒否の意思表示をした。
「アカリ。泣くな」
彼の眼差しは優しかった。
駄々を捏ねる私に困った顔ばかりしていたはずのシュヴァルツさんが、今は不思議なくらい、優しい笑顔を浮かべている。
私はその光景を夢かと思った。彼は手を広げていた。
「おいで、アカリ」
その言葉に吸い寄せられるように一歩ずつ、速足になって腕の中へ飛び込んでいくと、二本の腕を固く背中に回されて、息ができないくらいに強く抱き締められた。
夢なんじゃないかという気持ちとともに、まるで別れの儀式をされているようで、色々な気持ちの混ざり合った涙が押し出され、溢れ出していく。
彼の上品な肩に頭をグリグリと押し付けながら、「嫌だ、シュヴァルツさん、行かないで」とうわ言のように口にする。
そのたびに、彼は私の頭を優しく撫でていた。