ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋

「アカリ。お前は不幸ではない」

いつかも聞いた言葉だ。そのときはそう言われて苛立ちさえ感じたのに、彼の優しい腕の中では、切なさに変わっていく。

「シュヴァルツさん……」

「聞け。お前の運命が人を遠ざけるのは、お前自身が恐れているからだ」

「え……?」

「極上の血は、お前を守り、恐れるものを遠ざける。関わることを恐れるな。お前が望めば、血の運命を変えてゆけるはずだ」

体を少し離し、彼を見た。

目が合うと、シュヴァルツさんは少し微笑んで、指で私の涙を拭ってくれる。

「ずっと、暖炉の向こう側で泣くお前に、そう伝えたかった」

“ずっと”

あのヴァンパイアの館で、誰かが私の話を聞いてくれている気がしていた。

どんなに辛いことがあっても、あの館には、私のことを優しく見守っている“誰か”がいるって思っていたから。

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