ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋
見た目は洋館の一室というところ。
クラシカルで落ち着いた内装の部屋で、この余りある広さの中に書斎のデスクと本棚、そして暖炉しかない。
見覚えはないけれど、多分私は、この暖炉からここへ引っ張り込まれたはずだ。
私は彼の腕の中からふわりと地に下ろされ、やっと自分の足で立った。
改めて目の前の人を見上げた。
人間みたいだけれど、人間じゃない。
ファンタジー映画で見たCG加工の俳優とも、全然違っている。
この人は作り物じゃなくて、“本物”だ。
“本物”って、何の……?
自分で考え、問いかけていたが、本当は答えは分かっている。
この赤い目。それを持つのはきっと……。
「貴方は、ヴァンパイアなんですか……?」
直感で思ったことを尋ねると、彼はまっすぐこちらを見つめ返した。
「“こちら側”にはヴァンパイアしかいない。お前を襲った男もヴァンパイアだっただろう。無論、俺もだ」
彼は作り話でよく見るタキシードにマント姿のヴァンパイアではない。
襟の立った硬い上等な衣服で、軍服を思わせるデザインをしている。