ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋
彼はゆっくりと私に近づいてきて、すぐそばに立った。かすかに上品な香りがした。幻覚じゃなく、本当にそこにいるようだった。
「………シュヴァルツ、さん……?」
名前を呟いてみると、彼はフッと笑う。
「久しいな。アカリ」
呆然と見ているだけしかできずにいたが、やがてそこに彼がいる実感が沸いてきて、涙だけが溢れてきた。
「え……え……本物……?」
「俺の顔を忘れたか」
しゃがみこむ私と同じ目線になるよう彼もそばで腰を落とし、素肌の指で私の目元を拭った。
「お前は少し、変わったな。……美しくなった」
記憶にない甘い言葉に、やっと驚きよりも胸の熱さがじんと広がってくる。
甘い声に、綺麗な姿。思い出の中と変わらないように見えたけれど、近くで見る少し違っていた。
彼の黒いコートの下には白いセーターが見えており、ボトムスもあの上質な軍服ではない、カジュアルなものだった。まるでヴァンパイアではないみたいに。