ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋
彼は掴まえた私の手を引っ張って、口元へと持っていった。
手のひらを伝っている血に舌を這わせ始める。
「えっ、あ、あのっ……」
反射的に腕を引っ込めようとしたけれど、逃がさない程度の力は込められていた。
彼が舌を動かすたびに、口の中には牙が見え隠れしており、その鋭利な形にわずかに恐怖が戻った。
「“極上の血”を味わうのは初めてだが、想像以上だ。これではすぐに気付かれる。人間、口を貸せ」
「え?口、ですか……?」
私は自分の唇を指差した。彼は面倒そうに頷いて。
「口だ。早く貸せ」
襟を緩めながら、急に私との距離を詰め始めた。
何をするつもりか分からないけれど、私には拒否権がないため、彼に言われるがままに唇をモゴモゴと動かしてみる。
すると突然腰を引き寄せられ、乱暴に顎を掴まれる。
何……?
「えっ、あの、ちょっと……」
顎を引っ張られ、同時に彼の顔も近づいてくる。
いや、ちょっと待って、これじゃまるで……。
“キスされてしまう”と思ったときには、すでに彼の唇が私の唇を塞いでいた。