ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋

押し当てられる柔らかい感触。

視界は黒かったり赤かったり、揺れてはっきりしないが、それでも間違いない。

これは“キス”だ。

キスなんてもちろんしたことがないから、この異常事態に反応して全身の毛が逆立っている。

しかし彼の肩を押し返そうとしてもびくともしない。

やがてぬるりとした実体のない熱いものが、唇をこじあけ、中へと入ってきた。

「んんんっ……」

彼は何度も角度を変えて、その舌を差し込んでは中をほじくり返してくる。

そのたびにもれる湿った音に、耳を塞ぎたくなった。

キスをするとき舌が入ってくるなんて信じられないと思ってた。

皆してるっていうけど、都市伝説か何かなんじゃないかって。

彼の口の中にはたしかに牙があったはずなのに、私の唇にはまったく当たらず、腰が砕けそうになるほど甘い感覚ばかりが襲ってくる。

嘘でしょ、キスがこんなだなんて……!

それからは抵抗することすらできなかった。

自然と目が潤み、瞼が半分閉じ、視界がボヤけていく。

このキスは普通じゃない、キスをしたことはないけれど、私は直感でそう思った。

彼はまるで、私の口の中で何かを探しているようだったから。

「んっ……」

口の中を貪られ、意図せず甘えた声が漏れた。

聞いたことのない自分の声に体中が熱くなっていき、恥ずかしくなりまた腕を使って反抗を始めようと試みたが、彼はさらにその腕を絡めとって押さえつける。

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