ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋
彼は平然と答えた。
「お前を人間たらしめている魂を預かった。これで血は匂わぬだろう」
血がどうのと言われたので自分の膝を再度見ると、傷が綺麗に治っている。
触れると傷口は跡形もなく、サラサラとした膝に戻っており、信じられなくて何回も触れた。
それだけじゃない。
肌は血が通っていないくらいに白くなっており、視界もうっすらと赤い。
まさか、と思い、視線を泳がせ鏡を探したが、この部屋には見当たらず、とっさに目の前の人の瞳を覗き込んだ。
その瞳の中に映る自分を確認すると、映り込んだ目が赤く光っており、目の前の彼とさほど変わらない姿になっている私がいた。
嘘みたい……まるでヴァンパイアみたい。
「私、ヴァンパイアにされちゃったんですか……?」
「案ずるな。お前の魂はしかるべきとき、同じ方法で返してやる」
“同じ方法で”と言われ、また体の火照りが戻る。
だってそれって、またさっきみたいにキスをするということでしょう……?