ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋

遠い目で、高い天井からぶら下がっているシャンデリアを見た。

私は月夜ヶ丘のヴァンパイアの館で暖炉に飲み込まれたはずだけど、この館はあそことは似ても似つかない。

それもそのはず、向こうは何年も、ただの廃墟だったのだ。

言い表すなら、ここはあの廃墟が栄えていたころにそのままタイムスリップしたような……そんな感じ。

「まあ、シュヴァルツ様!お戻りになったのね!」

人混みの中から、上品なドレスの女性が私達の前へとやってきた。

彼女のブルーのドレスから見える肌は血の気がなく真っ白だ。

その女性の『シュヴァルツ様』という声に、周りの女性たちもぞろぞろと目の前へ集まってくる。

シュヴァルツさんはその女性たちを無視して通りすぎた。

てっきり足を止めるものと思い歩くスピードを落としていたのに、彼は私の肩を抱いて強引に連れていく。

しかし、女性は次から次へと目の前にやってくる。

一歩進めばひとり、またひとりと、目をキラキラさせた美しい女性たちが障害物のように立ちはだかった。

シュヴァルツさんが彼女たちを無視して掻き分けていくとき、その女性たちは皆、隣にいる私をひと睨みしていった。

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