ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋
「シュヴァルツ様、その女は誰ですの?」
人混みの中のひとりの女性が、私のことを聞いた。
気の強そうな綺麗な人で、その目に睨まれると私は背筋をシャンと伸ばした。
何か挨拶でもした方がいいのかと思い口を開きかけたが、喋ってはいけないと言われていたことを思い出し、すぐに閉じた。
そのことを咎めるように彼も私をひと睨みした後で、その女性には一言だけ答える。
「貴様らには関係ない」
刺すような冷たい声だった。
女性たちはショックを受けたように顔を歪めたが、代わりにすぐに私に睨みつけ、敵意満々といったところ。
ここにいる皆がシュヴァルツさんに恋い焦がれているのだろう。
彼女たちの態度は分かりやすかった。
私はショックでまだ体が震えている。
私も何か失礼なことをすれば、シュヴァルツさんに冷たくあしらわれてしまうのかもしれない。
これだけの非現実的な景色を目の当たりにしているはずなのに、そんなことが不安でたまらなくなった。