ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋
「シュヴァルツ様ぁ!お帰りなさいませ!」
何人目か、今度は十歳くらいの男の子が寄ってきた。
小さな彼の甲高い声がキンキンと耳に響く。
子どもと言っても、パッチリした大きい目をしていて、ブロンドの猫っ毛は輝きを放ちながらうねり、その姿はまるで妖精のようだった。
目も赤いし血色も悪いけれど、この子を見て、私は少しホッとした。
「世話をかけたな、ノア」
あれ……?
シュヴァルツさんが、今度は普通に話している。
先ほどまで人を突き放しながら歩いていたはずの彼が、この子には足を止め、ふわりと頭を撫でている。
「シュヴァルツ様、そちらのお連れ様はどなたですか?女性を連れているなんて珍しいですね」
「そのことで話がある。館の連中に気付かれずに関所に来い」
ノア君というその子は、首をかしげた。
「関所ですか?今日は宴のせいで扉は閉じているんですから、誰もいないですよ」
「その方が都合がいい。聞かれてはならない話だ」
「書斎ではダメなんですか?」
ノア君は質問を返すばかりで、なかなかうんと言わず、シュヴァルツさんの機嫌を損ねないか私はヒヤヒヤとしていた。
「書斎は駄目だ。人間の匂いが充満している」
シュヴァルツさんは小さな声でそう言ったが、ノア君は丸い目をさらに真ん丸くさせ、次の瞬間には辺りに聞こえる声で「人間!?」と叫んだ。
周囲の貴族たちが動きを止め、一斉にノア君、そして私たちを見た。