ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋
しばらくその快感に耐えていたけれど、やがてシュヴァルツさんは私の首もとから牙を抜き、顔を離した。
ハァ、ハァ、と呼吸をしながら、ぼうっと彼の顔を見ると、彼も私と同じ、溶けるように余裕のない表情をしていて、私はそれを見た瞬間、今までで一番胸が鳴ったのが分かった。
シュヴァルツさん、こんな顔もするんだ。
キスをしたときは、顔色ひとつ変えなかったのに……。
彼は口もとに手を添え、肩を上下させながら、吐息まじりに呟く。
「……驚いた。やはり美味いな」
見たことのない彼の表情を目の当たりにしたことで、初めて自分の血の力を自覚したが、しかし彼はそれ以上するつもりはないらしく、私の体を地に下ろした。
木の幹に背中を預けたが、力が入らずその場にズルズルと落ちていき、ついには座り込むと、側で見ていたノア君が駆け寄り、私の肩を支えてくれた。
「アカリ様の瞳が赤く戻りました。シュヴァルツ様、かなりの量を吸われましたねぇ」
シュヴァルツさんも少し疲れたように、頭を抱えるしぐさを見せる。
「ノア、お前は吸うな。これは子供向きではない……」
血の量を減らすって、こういうことか……。
まだ吸血の快感を忘れられない体をどうにか動かし、幹から背を離した。